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2009年5月27日水曜日
【三線ism】 謎の楽器の正体 ~秦琴~
さてみなさんこんにちは
前回、紹介した謎の楽器ですが、答えです(^^
実はこの楽器は「秦琴」といいまして、普通は梅の花の形をした6角形バージョンが有名なので「梅花秦琴」と呼ばれることが多いようです。
日本では「深草アキ」さんという秦琴の第一人者がおられるようですが、彼も伝統的な秦琴の弾き方を実践されているわけではなく、自己流の解釈で演奏なさっているそうです。
深草さんは、ものすごく緻密に秦琴のことを調べておられるので、その資料は必見です!
深草アキさんのページ
http://akifukakusa.com/
さて、今回買ったのは秦琴の円形胴タイプなのですが、これがまたいろんな歴史をもっています。
深草さんの研究などを参照していると、現在残っている中国の楽器「阮咸」「月琴」「琵琶」などのもとになった楽器があって、それが「枇杷」という楽器だそうです。
これは
①円形の胴をもっている
②ヘッドがまっすぐな棹を持っている(現代の琵琶のようにヘッドが折れ曲がっていない)
③弦が4本
という楽器なのだとか。
この楽器がもとになって、大きくなったのが阮咸であり、ネックが短くなったのが月琴ということになります。また、ボディが変形するといわゆる琵琶になってゆきます。
秦琴もこの流れを汲む楽器なのですが、弦数が3本になっているのが特徴です。ボディの梅の花デザインは後世のものでしょうから、本来は月琴や阮咸のような丸い胴が古いスタイルなのではないでしょうか。
さて、われわれシャミセニストから見ると関心の高い「3本弦」の問題ですが、これはあまりこだわらなくてもよさそうです。
楽器の系統において弦の数があんまり重要ではなさそうだ、というのが私の推論なのですが、それには以下のサイトを参照しながら、読んでくださいね!
中国屋楽器店さん
http://www.chinamusic.gr.jp/catalog/minzokugakki.html
↑ここを見ると、現代に残っている中国系の楽器の大半がわかります。
中国楽器の系統は4本弦が多いのですが、たとえば、月琴なんかは複弦を2コースずつ張るので「2弦」の楽器ととらえることもできますね。
そうすると二個や馬頭琴の「2弦」とも共通点が見えてきます。
中国屋楽器店さんのサイトをみると「秦琴」と「阮咸」と「月琴」の関係がよくわかるのですが、これを念頭にちょっと異国へ飛んでみましょう!
ベトナムスケッチさん
http://www.vietnam-sketch.com/special/monthly/2004/11/index.html
その国はベトナムです。ベトナムは中国から伝来した楽器がけっこうそのままの形で残っていて、みなさんもごぞんじ中国の蛇皮三味線「三弦」もおなじ形で現存しています。
もちろんニ胡なんかもあります(^^
さて、ここで見てほしいのは
http://www.vietnam-sketch.com/special/monthly/2004/11/001.html
http://www.vietnam-sketch.com/special/monthly/2004/11/003.html
ダン・グエットとダン・センという楽器↑
あれれ?どこかで見たような・・・。そして弦の数は・・・?
なんとなくわかってきませんか?中国から南のベトナムへ伝播していったときに、どんなことが起こっていたか!
そうです、円形胴の秦琴は2弦になって「ベトナム月琴」へと変化、梅花胴も2弦になって「ダン・セン」へと変化したようですね!
通常月琴はそのままベトナムへいってもおなじ形です。三弦もほぼおなじ形で伝播しています。
つまり、楽器の形態についていえば、弦の数はその地域や国の音楽の特性などによりけっこう変化するものだということです。
日本の正倉院には5弦の琵琶がありますが、シルクロード経由でヨーロッパへいくと、弦数は増える傾向がありますね。
というわけで、中国・ベトナム・琉球・日本と南への楽器の伝播を見てきました!こうしてベトナムの楽器なんかと比較してみると、三味線にせよ、琵琶にせよ日本の伝統楽器といいながら、
「中国の楽器の変形だねえ」
とあらためて実感してしまいます(^^
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