2023年11月20日月曜日

古典的 本格ゴッタン を作る

 

 さてみなさんこんにちは

 不定期ですが「ゴッタン」製作の依頼があり、製作の準備にとりかかっております。作るゴッタンは、ある程度価格と性能のバランスをとった入門的な楽器の予定ですが、すこし思うところあって、依頼分とは別に、


「本格ゴッタン」


の製作をやってみようと思っています。


 この本格ゴッタン、わたくし左大文字が「やりたいようにやる」というモットーのもと、お金に糸目をかけずに、入手できる限りのガチの南九州ゴッタンに近づけてみようかな、というマニアックなものになる予定(笑)


 どんなゴッタンにするかは、まだ構想中なのですが、


■ 古典的ゴッタンの本格レプリカ


でいってみようか


■ 文献にしか現れていない、古式ゴッタンの復元


でいってみようか、悩み中!


 いわゆる現代ゴッタンは、今、あるいは昨今普通に購入できるゴッタンを意味しますが、古典的ゴッタンは、南九州のどこかの納屋から、あるいは物置から見つかったようなものを意味します。


 私もそうした古典的なゴッタンを一つもっており、また現代ゴッタンも複数所有しています。

もちろん、自作のゴッタンもいくつかありますが、自分が作ったものは流石に変な感じがしますね。(南九州モノではなく、生まれも育ちも関西モノなので笑)



 たとえば↑は自作ゴッタンの第一号。ヒノキ一枚板ですが、ボディは集成材という面白い仕様です。


 ↑こちらは、左が現代ゴッタン。右が古典的ゴッタンです。現代ゴッタンでも、実は三味線よりかなり寸法が短いのですが、古典的ゴッタンはさらに棹が短いことがわかると思います。

 とはいえこの古典的ゴッタンのほうも「千年工芸」という工房さんが、おそらく昭和年間に作ったもののようで、いわゆる一点ものではなく量産品だと思われます。

 厳密に言えば古典ではないわなあ。


 作るとしたら右のレプリカあたりは楽しそうです。


 ただ、気になっているのは「文献上」出てくるさらに古いスタイルのゴッタンです。


 そのゴッタンは「2尺5寸」らしく、サイズ的には沖縄三線とほぼ同じです。どうもこの2尺5寸サイズのものが、古い形状なのではないか?と推測していますが、まだ現物に出会ったことがありません。


 そこで、せっかく古ゴッタンを製作するのであれば、この2尺5寸サイズを復元してみたいなあ、とも思っています。

 こっちも楽しそうでしょ?


 現在、依頼分を含めて材料あつめの最中です。良いものができればいいのですが・・・。


 




2023年11月6日月曜日

「2/6の旅人ギター」 PocketRock 開発備忘録

 

 さてみなさんこんにちは。


 今年は本業がなかなか忙しかったのですが、楽器づくりはボチボチです。


 思うところあって「PocketRock」シリーズを個人的に推してゆきたいなあ、と開発作業にかかっているのですが、今日はそのメモがてら。


 


 ざっと5棹くらい作って、いろいろ試しているところです。


 基本的にエコモデルは「廃材」なども利用しながら作りますので、見た目は悪いですが比較的安価に出来たり、逆にそこらへんに気兼ねなく転がしておけるという利点もあります。


 


 まずはPocketRockソロ、2棹作りました。こちらはサイズがとても小さく、可搬性が高くなっているモデルです。音はオリジナル系に劣りますが、感覚としては500ミリリットルのペットボトル1本分くらいのイメージなので、気軽に持ち出せます。


 


 残りの3棹は、いわゆるPocketRockエコ モデルです。廃材利用です。


<製作メモ>


■ 塗装との関係 ■

 エコモデルは建築系の梱包用に使われた木材を再利用するので、各所に傷がついていました。なるべく傷が少なく、平滑な表面を持つものを選んで作るのですが、傷無しというわけにはいきません。


 オリジナルモデルやプレミアムは、カンナがけされた平滑な表面の木材を使うので、ボディ等に傷はほとんどないので、そこが大きな違いです。

 今だと、「オリジナル→ ヒノキ+ファルカタ」「プレミアム→ ヒノキ+アガチス」「エコ→ 松かラワン+松」の材が多いです。


 そこで今回は、表面の平滑化を狙って下地塗装を入念にしたのですが、結果としては「何もしないほうが良い」ようです。

 下地は粒子の細かい粉のようなものを溶いて、傷部分に埋めてゆくような工程になるのですが、これを埋めると板や棹の響きがぼやけるというマイナス面がありました。

 つまりそれぞれ硬度が違うので、木材の隙間にふわふわのものを詰め込むような働きになってしまうようです。


 下地を4〜5回施工して、それから水性ステイン+ラッカー仕上げ、なのですが、なーんもしないほうが音はよさそうです(苦笑)

 下地なし+ポアステイン色つけ+ラッカー仕上げ

が一番音がいいので、「傷」はそのまま、ということになります。


 見栄えと音のどちらを取るか、悩ましいところですが、私個人的には音優先かなあ。


 オリジナルモデルは、ラッカーのみで色もつけず塗布物は最小なのが良いようです。プレミアムはステイン着色+ラッカーですが、これももともとの材の吸い込みが少ないので、音への影響はあまりないようです。


 松や杉系の柔い材料+下地粉は、相性が悪いですね〜。柔らかいもの同士が合体して、ほわんほわんした音になることがわかりました。



■ 平滑度の追求 ■


 実は見栄えだけでなく、「平滑度」という部分を重視して、今回の試作ではかなりヤスリがけ工程を増やしました。

 粒度を変えながら、かなりの回数やすりがけをしています。


 そのため、指板部分の平滑度はかなり高くできることがわかりました。この部分は糸と直接触れるので、曲がっていたり凸凹があるとマズイのですが、シュパッとまっすぐな面を作れば、いい音に繋がります。

 ただ、それももし傷部分があると、そこを下地で埋めて平滑さを出さなくてはいけないため、材の選び方が難しいですね〜。


 廃材だと「平滑面」の部分だけを切り出して棹にしてゆく工夫が必要です。そうすると元が廃材なので「指板面はきれいだけれど、ほかが傷だらけ」ということもありえます。


 そのあたりのバランスと修正が悩ましいところです。



■ ペグの問題 ■


 今回複数製作したのは、ペグのチョイスも調べたかったからです。


 数年前と比較して、ペグの値段がざっくり倍くらいになっており、種類も減って入手が難しくなっています。


 もちろん、お金をなんぼでも出せば良いペグはあるのですが、PocketRockはせいぜい数千円の楽器なので、高いパーツを使えません。


 そこで、2〜300円くらいのペグを選ぶわけですが、それが今は500円くらいになっているという感じです。

 以前なら400円くらいだったフリクションペグでも700円から1000円くらいします。国産だと1500円〜2000円です。高い!


 また、ペグはギターやウクレレペグを流用するのですが、ギターやウクレレはヘッドが傾いているので、それに合わせた穴の位置になっているのが、PocketRockには合いません。

 なので、PocketRockでは「穴が2つ」のペグを採用することが多いです。


 これも穴2つ式ペグのバリエーションが減っているため、今回は「穴1つ式のペグを買ってみて、スチールポストに穴を自分で追加して開ける」という実験をしてみました。

 しかし、スチールポストの先端が削ってあったりすると、そこに弦が引っ張られてマズイとか、さらにいろんなことがわかってきます。


 やはり実際作ってみないとわからんものですね。


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  オリジナルモデルやプレミアムモデルの注文があったときのために、「最良の組み合わせのパーツ」は十数棹分確保していますので、とりあえずはご安心ください。


 ただし、エコモデルの価格と仕様のバランスをどうするかは、悩みどころですね!


 本来私は、「めちゃくちゃ安い値段で楽器を作りたい」とは思っているのですが・・・。

 そうすると使い勝手が悪くなったり、違う問題が出てくるわけで。


(たとえば、無期限キャンペーンとしてエコモデルにもギアペグをこれまでつけてきました。フリクションだとドライバーでネジを締め直す作業が頻繁に必要になってくるんですね。あるいはいっそ、「木のペグ」とかにすれば価格はもっと抑えられるかもしれませんが 苦笑)



■ 弦の違いが音に影響?! ■


 木材をはじめすべてのパーツが価格上昇の昨今ですが、弦も高くなってます。本来は「奄美三線の弦」を使うのがベターなのですが、価格をおさえるために

「ナイロンテグス10号」

を細い方の弦に採用して出荷しています。


 今回試験的に、太い方の弦を「ナイロンテグス30号」にしてみたのですが、音は鳴るものの、「小気味よくない」のです。


 小気味がいい、とはなんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、30号の太いテグスだと、音は鳴るんですが、もともとの体つきが太いのでポヨンポヨンなんですね。なので音がこもります。


 それに対してもともと使っていた奄美三線の弦は細い弦の「巻き弦(実際には撚り弦)」なので、最終的な径の太さは同じですが、シャキっとしてるんです。


 巻き弦だとアタックが強めで、輪郭のはっきりした音になることがわかりました。ギター系では巻き弦のほうがサスティーンも長いとされるようです。


 で、体感的にこれはやっぱり「太い方の弦」には巻き弦を使いたいなあ、という発見です。細い方の弦は、どっちにしろ高音部分担当なので、キンキンした音になるためアタックは強めに出ます。


 そもそも奄美三線の弦も、女弦(3の糸)はナイロンの一本抽出弦なので、ナイロンテグス10号とほとんど違いがありません。



 まあ、こんな感じでいつも開発してます〜。今日はそんなよもやま話でした。