2024年1月12日金曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む17 捨てる悪魔あれば、拾う天使あり!ゴッタンの語源に迫る!

 

 さてみなさんこんにちは。


 ゴッタンの語源に再び迫る新シリーズ! 前回登場したのは「ごふたん」という謎の言葉でした。


 南方系の言葉で「ゴータン」だと推定される名詞が、ゴッタンにとてつもなく関係する?という恐ろしい話でしたが、ひらめいてしまったかもしれません!!!


 まさに、悪魔の証明からの復活大逆転劇でございます!


 三弦を始めとする中国系楽器は、中国各地から関連地方に広がり、当然ながら日本にまでやってきています。そこで雲南省や貴州省などの少数民族の楽器までしらみつぶしに探したのですが、鳥集忠男さんの言うところの「グータン」は見つからなかったのでした。


 基本的に、中国の楽器で三弦のものはすべて「三弦」です。(秦琴や、月琴、阮咸などはもちろんありますが、三弦派生の楽器はほとんど三弦に近い名称がついています。


 したがって「グータン」が存在するとしても、なぜ「三弦」から離れているのか、よくわからない、という点が問題でした。


 ところが東郷町の方言辞書では「ゴータンサンセン」なる語を挙げています。これは、あくまでも三弦の一種でありながら、それを形容するなら「ゴータン」であることをイメージさせます。


 ちなみに余談ながら、中国の「三弦」は「サァン シィェン」に近い発音だそうで、その意味では「さんしん」はいいところをついている感じがしますね。



https://ja.bab.la/%E7%99%BA%E9%9F%B3/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E/%E4%B8%89%E5%BC%A6%E7%90%B4 


↑で現地の発音が聞けますが「サンシンチン」と言っているように聞こえます。(三弦琴)


 さて、本題です。


 私は中国の秦琴も持っているのですが、秦琴、三弦、月琴、阮咸などはそっくりそのままベトナム楽器になって、あるいは2弦に減って伝播していることが知られています。


https://saisaibatake.ame-zaiku.com/gakki/gakki_zukan_vietnam.html


ベトナムの楽器は、↑など多数のサイトで見ることができますが、


ダン・グエット ダン・セン ダン・タム


など、「ダン」がつく楽器が多いことが特徴です。


ちなみに


■ ダン・グエット グエットは月を表すので、月琴

■ ダン・セン センは蓮の花 オリジナルは中国秦琴(梅花秦琴)なので、花の形

■ ダン・タム タムは「三」つまり三線

■ ダン・ダイ ダイは「長い」つまりロングネックの弦楽器

■ ダン・バウ バウは瓢箪(ひょうたん) ひょうたん型の一弦琴


という感じです。


 すでに勘の良い方は気づいたかもしれませんが、ベトナム語と言いながら、中国文化の影響を多大に受けていますから、実は中国語であり、漢字です。


 日本語でもかなり意味が通じます。


■ 弾月 だんぐえっと だんげつ(日本語風読み)

■ 弾蓮 だんせん 

■ 弾三 だんたむ だんさん

■ 弾長

■ 弾匏 (匏はウリなどの仲間)


■ 弾箏 ダン・チェイン というのもあります。日本語風だと だんきん


 さて、これだけ「ダン」が続くと、「ダンが弾である」ことは納得できますし、なんとなく


「ゴッタンのタン」


が関係あるのではないか?と思ってしまいますよね。


 鳥集説でも「古弾(グータン)」でしたから、タンは弾である可能性が高くなってきました。


 では。「ごふたん」とはなにか。


 たんが「弾」だと仮定すれば、ベトナム語における「ゴー」が何かを調べたらよいことになります。


 で、調べたら恐ろしい結果が出たのです!!!


 なんと、ベトナム語で「ゴー」は


https://vjjv.weblio.jp/content/%E3%82%B4%E3%83%BC


「木、木材」


なのです!!!!


 おっそろしいほど、そのものズバリの回答ではないですか。


 こんなにスキッとつながることがあるでしょうか!!



 つまり、ベトナム風に名前をつけるならば「弾木」(ダン・ゴー)であり、中国風に入れ替えれば


「木琴 (木弾・ゴーダン)」


でもあることでしょう。(けして ”もっきん” ではない)


 これで、鳥集説が発せられるかなり前に、東郷町の方言辞書が「語源は南方系」と書いた意味がわかるというものです。


 ベトナムだけに限るものではありませんが(なぜなら、越南語も中国語の影響下にあるから)南方系中国方言としてゴー・ダン(ごふたん)があり、それが音便化して「ゴッタン」と変化していったと考えれば、自然です。


 当時のベトナムなどに固有名詞としての「ゴー・ダン」が存在していたかはわかりません。しかし、「ゴーな、ダン」(木の弦楽器)という言葉はあったと思います。


 基本は中国語なので、特段不思議なことばではないからです。


(苗族に「古瓢琴」があったり、「弾琴」があったりしたことは、この中国系「琴」の使い方と、ベトナム系「弾」の使い方の接点としておおいに納得できます)


  ちなみにベトナム語では「cay 」という語も木を表すのですが、cayがどちらかというと生木や植物としての木を表すのに対して、go は木材や材木に近いようです。


 そのことも「板三線」の意味に近いと思います。


 というわけで、左大文字的結論は、


「ゴッタンは 木弾(ゴーダン) であった!」


ということになりそうです。


 しかし、ゴクタンなどの語も多数見られるので、ゴーダンの意味がわからない中で「ゴク」系の硬い印象の言葉と融合した可能性もあると思います。


 その意味では、「ごったましい」系の語源も、あながち否定するには早いと思います。


 (つづく)










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