さてみなさんこんにちは。
前回までの一連の調査で「うっすらと」ごったんの正体が見えてきたところですね。
■ ごったんは、沖縄三線の写しであるが、システム化されず、楽器としては「素人(ただし木工については職人)」が真似したものだ
というあたりが、その中心部分になることでしょう。
その原型は、「全長二尺五寸」で間違いないと思います。研究者によれば沖縄の三線も「二尺五寸」の可能性が高いことと合致するからです。
ではなぜ、「沖縄三線」「奄美三線」「ごったん」は短いのか。そして「本州三味線」は長いのか。
その謎についても、ズバリ迫ってみましょう。
今回、三線系楽器の成り立ちや構造を調べてゆく中で、各地の民謡や音楽がどのように演奏されているかも合わせて視聴してゆきました。
すると、はっきりとその傾向がわかってきたのです。これは演奏者じゃないと気づかない視点かもしれません。
私は地唄三味線が最初に触った楽器でしたが、地唄など、古い時代の三味線音楽は「メロディ演奏を行うが、3本の弦を比較的まんべんなく使う」という傾向があります。
三味線の音楽を「ちん・とん・しゃん」と表現したりしますが、どの弦も弾くから「ちん(細い弦)・とん(中弦)・しゃん(太い弦)」の音が出ているわけです。
浄瑠璃などは、ベース音である「一の糸(太い弦)を多用して、「デデン、デンデン」と弾くことが多いので、低音寄りです。
それに対して、長唄など、時代を経るに従って「高音部分、ハイトーン」の領域が増えてゆく傾向があります。歌舞伎の獅子ものなどの楽曲をイメージするとわかりやすいですが
「チャカちゃんチャカちゃん、チャカチャカチャカチャカ」
と、高音部を速く弾くメロディが多用されます。
この場合、棹が長いほうが、勘所を正確に押さえやすいのです。棹が短いとフレット間が詰まりますから、ハイトーン部分は、勘所間がものすごく短くなり、押さえにくくなります。
ということは「長い棹」は音程の上下を激しく取りやすいということになるわけですね。(音域そのものは、どの三味線でも同じです)
それに対して、沖縄三線の場合は特殊で、これもメロディを弾き、なおかつ3本の弦をまんべんなく使うのですが、「手の位置が固定」という奏法上の特徴があります。
つまり乳袋に左手親指の付け根を当てた時、そこから左手はいっさい動かさず、指だけを伸ばして勘所を押さえるので、ハイポジションを基本的には使わないのです。
(棹の中間くらいさえ、ほとんど用いません。常にローポジション固定です)
ということは、ハイポジションが不要なので、棹は開放弦近くさえ弾ければよいことになり、棹は短くてかまわないということなのでしょう。
中国三弦がもともと長いのに、沖縄三線が短くなったのは、そうした理由だと思われます。
======
さて、ではゴッタンはどのように考えればいいのでしょう。
南九州の音楽、それも本州サイドの音楽は「ジャンカジャンカ」であることを以前から述べていますが、これは棹の真ん中あたりの音階を押さえて、右手は上下にストロークで弾きます。
メロディラインは少なく、バッキングのみですから、中音領域ばかりが、同じリズムで繰り返され、あまり展開しません。
沖縄三線のように、左手固定ではないけれど、ハイポジションまでは必要ない、というのが、本来のごったんのスタイルでしょうから、一応、理に適っていますね。
ところが、おそらく戦後などに「よそから入ってきた民謡」なども弾くようになった時、どうしても三味線の「領域の広さ」が求められるようになった可能性があります。「荷方節」などはもともと秋田の民謡ですが、本州各地の民謡や荒武さんのように「語り物」などが演奏されるようになってきたおりには、ある程度の「棹の長さ」が必要になってきたのだと思われます。
こうして、ゴッタンの棹は、当初に比べて長くなり、三味線に寄っていったものと考えられるのです。
(つづく)
0 件のコメント:
コメントを投稿