2008年5月22日木曜日

【三線ism】 チープ&ポップ&エコロジー ゴミの山は宝の山










 さてみなさんこんにちは

 今日は、左大文字流の楽器製造工房からのレポートです。

 いま、左大文字流の工房では、

 1 板張り三味線の開発と製作
 2 シャミレレ・和クレレの製作と開発
 3 新楽器の開発
 4 市販三線のパーツ交換と改造
 5 市販三味線の改造

なんかをごちゃごちゃとやっているのですが、ここしばらくはずっとシャミレレ(和クレレバージョン)を作っています。

 それも、思うところあって製作しているのは全部Type-Rシリーズ(リサイクルモデル)です。
新品の木材も寝かせてあるのですが、建築系の廃材をとってあるので、それを削ったり張り合わせたりして、ひとつの楽器として仕上げることに情熱を燃やして、いやハマってます(^^;

 最初の写真は、つい昨日仕上がった「和クレレ」を裏側から撮ったものです。
 棹の部分が2つの薄い板材を張り合わせて厚みを出しているのがわかるでしょうか?
 白い厚めの木材と、赤い薄めの木材が合体しています。

 こうすることで、棹のそりを防止して、適度な厚みに仕上げることができるわけです。

 2枚目の写真は、廃材の山。でも、私にとっては宝の山です(^^

 ふつうの楽器は、そこそこ大きな板材を取れないと作れないのですが、シャミレレ・和クレレはほんとうにすこしの材からでも出来るので、どんな端材からでも材料が取れます。

 3枚目の写真のように、めぼしい材は乾燥させて寝かせます。ここにおいてある材は、一度それぞれの仕事をちゃんと果たして、本当なら捨てられるはずだった木材たちです。

 こすれた汚れなんかもついてますが、こういう傷は研磨してやれば取れるものも多いのです。

 4枚目の写真は、シャミレレの棹を貼り合わせているところです。こんな風に、まったく違う厚みとかサイズのものから、最終的にふさわしいサイズにそろえながら組み込んでゆくのです。


 長年、三線や三味線の世界にいると、世界レベルの稀少材とかワシントン条約にひっかかる材など「稀少で良い材料が、楽器としても価値がある」という理屈に浸ってしまいます。

 紫檀・黒檀・紅木といった木材をはじめ、象牙・鼈甲・ニシキヘビなど、非エコロジーなものであるほど『良し』とされる楽器の世界。そこにハマってしまうと、どんどん環境にやさしくないことを追求するのが、演奏家として、また製作者としてすばらしいことのように思ってしまうわけです。

 たしかに、こうした稀少材は、すばらしい音を奏でます。長い歴史の中で、良いものが選ばれ淘汰されてきた結果でもあり、尊重すべきことでもあります。

 しかし私は、一流の演奏家や人間国宝が、そうした楽器を求めることはかまいませんが、初心者などが頭から「稀少材はいいものなんだ」みたいな気持ちになるのはけして良いことではないと考えます。

 むしろ、カンカラ三線の精神ではないですが、「そこらへんにあるものから、廃材からこそ生活に根ざした音楽は生まれる」し、その心が「本当の音楽のすばらしさに通じる」と思うわけです。音楽を求める心は、材を選ばず、どんなものからでも楽器を生み出す、ということがチープ&ポップの原点だと思っています。

 

 この気持ちを裏付けることがあります。それは、シャミレレの場合、新品材料で作っても、廃材で作っても音はまったく同じだ、という事実です。三味線や三線はサイズも大きく、材やつくりで繊細に音が変わってきますが、シャミレレのように構造を単純化すると、ほとんど音質の差がなくなってくるのです。

 廃材のほうが、時にはしっかり乾燥されていて安定しているほどです。


 荒削りだけれど、力を秘めたリサイクル材楽器を一度試してほしいものです。


0 件のコメント:

コメントを投稿