さてみなさんこんにちは
前回から、インターネットのオークションやフリマサイトで「中古の三線」を買おう!というお話をしているのですが、いよいよ今回からはその目利きのポイントについてお話しましょう。
とまあ、その前に、またまた脱線余談のように思えるかもしれませんが、「三線のおおまかな歴史」について考察しておきたいと思います。
<三線の歴史1> 平成が終わり、令和が始まった今こそ、最良の棹が入手できる時期である!
国内で確認されている一番古い三線は、どうやら江戸時代の「元禄時代」に相当するものだそうですが、それ以外では「文政時代」のものなどが見つかっており、これらはニュースになるような歴史的価値のある古三線だと言えるかもしれません。
それでも、せいぜい江戸時代までで、本州の文化財であれば鎌倉時代とか、平安時代のものがゴロゴロしているわけですから、
★ 三線の歴史的価値は、沖縄文化に限ってのみの価値であり、本州全体における文化財価値は低い
と言えるでしょう。これは三線の価値を低める発言ではなくて、国宝とか重要文化財としての三線はたぶんこれからもあまり出てこないよ、ということを意味します。
その上で、「戦前の棹」「ドル時代の棹」「昭和の棹」「平成の棹」「これからの棹」ぐらいに年代が分けられるのですが、実は楽器として一番よいのは
★ 平成の棹と、今の棹がおそらく最高
と言える事を念頭に置きたいと思います。
古ければ古いほどいい!とついつい考えがちですが、三線の場合はストラディバリウスのようなバイオリンなどと違って、「古い楽器=よい楽器」とは限りません。
実は平成年間から今ぐらいが、国産の三線は「いちばん熟成されて、いちばん技術的にも文句なし!」の棹がたくさん出てきています。
当然、八重山黒木などの希少材が少なくなっており、一説には「もはや材としては在庫のみ」という話も聞きますが、材として確保されている分も含めて、また製作者さんの熟練度や名工の存命期間なども勘案すると
「今が一番いいものが残っている最後だ」
と言えるかもしれません。逆に、古い三線の多くを見ていると、作例の幅がかなりあって、
「作者によって形やサイズ、各所の仕上げ方もまちまち」
なものが多数あります。
それがダメだというのではけしてありません。そうではなくて、楽器としての振れ幅が大きく、今のように「ある程度この型はこうあるのが望ましい」という統一感がない時代であった、ということを意味しています。
バイオリンなんかは、すでい「統一されたスタイルと寸法」が定まっており、それがそのまま維持されていますが、三線がそのように統一感を持つようになったのは結果として
「昭和後半~平成」
くらいの棹に相当するという感じです。
それ以前だとたとえば「真壁型のようなラインでもあるし、違う型のようにも見える」みたいなオリジナルな形状の棹が多かったりした、ということです。
<三線の歴史2> 古三線とは、つまり古民家である。
文化財として古三線を見ない、ということを念頭におけば、古三線とは古民家のようなものだとわかります。古民家が好きな人が一定数いて、リフォームなどをしながら長く住まうという感じです。
古三線は胴と皮はおそらく100%ダメになっているか、都度張り替えられているかですから、リフォームをしながら古民家好きがどれだけ愛用するか、という話です。
ですから、古三線にありったけのお金をつぎ込むかどうかは「好事家」の世界です。それよりも、今の新作三線の材と作者がはっきりしたものにお金をかけたほうが、
楽器としての三線は、絶対に良いものが入手できる
と言えるでしょう。
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そうすると、オークションで三線を入手するとは、その目的がいろいろ異なる場合があるということを意味しますね。
◆ 古三線をマニアックに収集したい人→ そのまま持つ人 ・ 塗り替え張替えなど改修する人
◆ 実用的な平成年間くらいの棹を入手したい人
◆ 海外製でもいいので、安くほしい人
◆ 昭和年間~平成年間くらいの棹で、塗りを剥がせば良材の黒木だったみたいのがほしい人
などなど。最後のは、もはやトレジャーハンターみたいな感じです。
それぞれの目的の人達が役に立つようなお話をしましょうね。
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◎ 三線目利きポイント1 最初に見るのは猿尾
オークションやフリマサイトでは、写真からしか判断ができません。たまに作者や販売店の情報が記載されている場合もありますが、それらは補足情報ですから、写真だけである程度判別できる審美眼を鍛えてゆきたいと思います。
いやまあ、わたしも修行中ですが(笑)
さて、最初に見るべきは「猿尾」です。ここが黒いか白いかで判別するのですが、黒いからといって黒木なわけではなく「塗り」が施してある場合もあります。
ただ、白い木の場合は、「それだけで雑木ほか材質がわかる」のみならず「そこを塗るコストもかけていない」こともわかります。
また黒くなっていても、「塗り」であるとすぐわかる仕上げもあるので、ここで最初に材を判別するにはよいポイントでしょう。
さらに「猿尾が縦長」「猿尾が横長」の作例があり、作者やお店によって違いが出ます。
おまけに「猿尾の面取りの仕方」で作者や販売店を予想するワザもあります。深く面取りして落とす人や、角が残り気味の人など、作者の個性が出ます。
◎ 三線目利きポイント2 付属カラクイで年代がわかる
カラクイは交換されていることもありますが、ある程度茶色く変色しているなど年代を感じさせるものであれば「形状」を見れば年代がわかります。
(新しいものに付け替えていない、としての形状判断です)
○ 砲弾・ロケット型 昭和年代~ 比較的古い棹に搭載されています。
○ 直線削り型 2000年前後から 一直線に削り落としています。
○ 二段削り型 比較的近年 差込穴に対して削ってある箇所が、2段になっています。
○ シンプル茶色 最廉価モデルに付属 おのずと棹の質も判断できます。
◎ 三線目利きポイント3 棹から離れて付属ケースも
年代の推測に役立つのが、付属ケースの判断です。守礼印ケースは有名ですが、後期型は不織布の部分が増え、コストダウンされています。
2000年代以前のものは、すべて本布でできており、実は古いほうが質がいいのです。
その後、海外製のパクリケースも増えましたが、ケースによって年代が特定可能です。
○ 守礼印 初期型 ~2000年ごろ 本布製
○ 守礼印 後期型 2000年ごろ~ 不織布採用 白地に青の「鞄」タグ 国産タグ
○ その他 セミハードケースなどは近年 ソフトケース付属は棹も安い。
◎ 三線目利きポイント4 人工皮にはランクがある
このお話はnoteで説明したので、ここでは割愛します。人工皮には4段階くらいのランクと価格差があり、どの皮を採用しているかで元の棹の値段がおおよそ判別できます。
人工皮三線のランクを見分ける方法
○ 特A 古い初期型と現行品があって、柄は同じですが、現行は色あざやかなので分かります。
○ A 特AとAくらいを採用している棹は、良質な初級~中級三線と言えます。
○ B+ 比較的安価な入門者向けネット通販三線です。海外製。棹2万円前後
○ B 最安値クラスの入門者向けネット通販三線です。海外製。棹1万円後半から。
特AとBは注意が必要な棹があります。
◇ 特A 古い初期型は2枚張り合わせになっていて、表の一枚のみが剥がれる事例があります。
◇ B もっとも安価なものは、裏面の皮に印刷がなく、無地だったりします。このあたりになると新品でも12800円くらいの棹なので、要注意。
◎ 三線目利きポイント5 デザインの違いを見逃すな
弾きにくい三線
の記事でも書いたのですが、乳袋の裏側の形状などには、作者の個性が出ます。
もっとわかりやすいところとしては、天からチラ天にかけての形状違いがあります。
天は正面から見て丸く半月型になっていて、実際は棹を横に寝かして置くと、先っちょは垂直にスパンと落ちるように作られています。
その先っちょが地べたに置く際の台のような役割も果たしますよね。
その先っちょの半月部分を「ゆるやかな弧を描いて落とす」製作者さんと「山のように右左にはっきり分かれて落とす」製作者さんがいます。
この違いは、ちょっと古め(2000年前後)までの作例では顕著に出てきます。
なぜなら国産の作者がそのまま作っていると、ここに個性が出るのですが、近年になればなるほど海外製では個性を殺しますから「正確な弧を描かないと不合格」みたいになっているのですね。たぶん。
だから「山形の天」を見るとちょっと嬉しくなります。そういう棹は買いです(笑)
◎ 三線目利きポイント6 スンチーは高い
スンチー塗りや茶棹、赤棹みたいなのは「いいか悪いか」で言えば、実際にはよくわかりません。
よくわからないというのは、これは流行みたいなもので、一時期は別にどうでもいい木で作っているのに「スンチー」で仕上げた棹がたくさん流通したからで、スンチーだからいい棹だとは限らないからです。
しかし、結果的には、スンチー塗りの棹は、通常の黒いものよりはかっこいいので、販売される時もちょっとだけ高めで売られていた事情があります。
ですから、オークションでもスンチーとか茶棹は、落札価格がおのずと高くなる傾向にあります。
材の良し悪しはともかくとして、スンチーで安く落札されている事例はないです。大ハズレかもしれないけれど(苦笑)
本当のスンチーの真価を発揮する棹というのは、黒木で作られていて真っ黒に見えるものです。真っ黒な下地で、透明・茶漆なので、やっぱり外から見ると
真っ黒に見える
のだけれど、 そこにほんのわずか数センチだけ、白太の部分があって、そこが透けて見えるものだから、そこがかっこいいのです。
たった数センチの白い部分を見せるためにスンチーで仕上げている、というのがホンマモンにかっこいい棹ということになりますが、まあ、お高いよ。覚悟してね。
まあ、いろいろ書きましたが、いよいよ次の後編で実践練習と参りましょう。