<特集>
新楽器「PocketRock」開発秘話。
~アナログに回帰する ”うたうたい” のためのアコースティック楽器~
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(今回は、ちょっとインタビュー風にまとめてみました(笑))
■ いよいよ量産体制に入り、すでに初期ロットが出荷されはじめている新楽器「PocketRock」、チープでポップなこの楽器の特徴について、開発者の左大文字堯司氏にインタビューしました。
編) 左大文字工房から発売された「PocketRock」かなり人気のようですね。
左) ありがとうございます。おかげさまで初速の滑り出しは、思ってもみなかったような反響をいただいております。昨年末は納期遅れも頻発しました(汗)
編) これまでに、わけのわからない楽器をいろいろ発表してこられましたが、その中でもみなさんの期待値が高い、ということですか?
左) ですね!まあ、ネットの世界でもリアルな世界でも、手作りの三味線系の楽器をいろいろ発表したり、イベントでみなさんと作ったりしてきたんですが、かなり手ごたえを感じています。というより、PocketRockについては、みなさんが「面白い!」と思ってくださる率が高いというか。
編) ちなみに、既に発表された楽器で主なものを紹介してください。
左) はい。まずは「兵庫県立丹波並木道中央公園」さんとコラボしてずっとイベント等を実施していた「手作り三味線・シャミレレ」シリーズです。
左) 三線サイズのものと、ウクレレサイズのものを提供してきましたが、これが既に300棹以上出てます。
編) 300!すごい数ですね!
左) おかげさまで全国から製作イベントにお越しいただいて、ずいぶんと広まりました。これは総ひのき製で、雨の日などでも皮を心配せずに弾けるので人気のようです。
編) あと、近年のヒットといえば、やはり「サイレント三線S3」ですか?
左) あー、これも数十棹出てますね!作る方はちょっと手間がかかるので、しんどいのですが・・・。
編) 写真を見る限り、けっこう量産してるじゃないですか!(笑)
左) いやいや、これは一見胴もついてないし棹だけみたいなんですが、中をくり抜いて電子回路を仕込ませたりとけっこうめんどくさいんです。いちおうエレキで鳴りますので。
左) ちなみに、これの兄弟モデルで「サイレント三線S4」というのがあるんですが、面白いことにこっちは一切注文がありません。つまり、販売数ゼロです(爆笑)
編) 世間は正直だってことですか?
左) ですね。特にネットの反応は「いいものはいい」と即座にアクションが返ってきますが、そうでないものは全く無反応です。サイレント三線S4は「三線なんだけどギター風」というギャグなんですが、そこまでやってしまうと「じゃあ、ギターでいいじゃん」と(笑)
編) なるほど、たしかにギターに似すぎです。ちなみに、わけのわからない楽器、他にもありますか?
左) はい。実はこれが「PocketRock」の源流というか、ルーツになった楽器なのですが、「どんぶらこ」という楽器を子供向けに開発しています。
編) おお、顔になってる!
左) 子供向けなので、いっそ顔にデザインしてしまった楽器です。これは元々は「篠山市立チルドレンズミュージアム」さんとのコラボ企画で製作イベントをやったものです。その後、別の企画でイベントを2回くらいやったので、50棹以上出てます。
編) これも50棹ですか!広まってますね~。この楽器の特徴は何ですか?
左) 実はモンゴルの方に、カザフスタンという国があって、そこに「ドンブラ」という2弦の楽器があるんです。もちろん、三味線の仲間なんですが、弦が2本しかついていない。でも、素晴らしい演奏ができるので、これをコンパクトに子供向けにできないかと思ったのがどんぶらこです。
編) 先ほど、この「どんぶらこ」と「PocketRock」が関係あるようにおっしゃられましたが、どういうことでしょう。
左) PocketRockも弦数が2なんですね。なので三味線からは1本弦が少ない。でも、たった2弦でも、和音は鳴らせるし、かなり多彩な表現ができるんだ、ということを「どんぶらこ」を作ってこどもさんたちと弾いているうちに発見したんです。で、これは「こどもにはもったいない」と(笑)
編) ということは、PocketRockの対象年齢は大人向け、ってことですね!
左) そうです。基本構造はどんぶらこと同じなんですが、PocketRockという形・デザインに昇華させる際には、かなり頭を使いました。たとえば、ギター・ウクレレ風のペグを採用したり、全長をできるだけ短くしたり、胴をコンパクトにしたのも設計段階で無駄を削ぎ落としたかったからです。
左) PocketRockは、大人、つまりオヤジであったり、ロックなお兄さんお姉さんが楽しめる楽器になっています。お子様は禁止です(笑)
編) お!、面白い資料が出てきましたね。旅のギター、なんてタイトルがついています。
左) はい。当初は持ち運びが簡単にできるコンパクトな楽器をイメージしていました。もちろん、今でもそうなんですが、図にもあるとおり、どんぶらこのペグ版からスケッチがふくらんでいったわけです。
編) 「細い胴」にけっこうこだわってますね~。あと、最初はポケットロケットだったんですね。
左) ですね。とにかく、絞り込みたかった。大きい楽器は手作り三味線もあるし、どんぶらこもけっこう大きな胴を残している設計なのですが、最低限まで細くしたかった、というのが設計思想です。名前については、悩んだんですが、ロケットよりロックだよな、やっぱり!ということで変更しました。胴が細いということは、もちろんロケットのイメージもあったんですよ。
編) サウンドホールの位置が、現行版とは逆ですが、何か意味があるんですか?
左) あります。これはデザイン的にはどちらでもOKなんですが、実際にはこの絵の位置からストローク、つまり弦を弾く時の手が動きはじめます。ギタリストなんかでも、常時この位置に手をおきながらアルペジオを弾いたりしますよね。
編) ああ、そうですね。そこが支えになるというか。
左) なので、それで音をふさいでしまわないように、基本胴が小さいもんですから、邪魔になりそうなものは極力移動させたわけです。
編) へえ~。考え抜いてあるんですね。
左) サウンド面でもおなじ発想です。旅にギターを持っていくとして、基本ジャカジャカ弾きなどで弾き語りをするとすれば、どんな機能が必要か・・・。
編) うーん、まずはコードをジャカジャカ弾きたいですね。旅先でリフだけ弾いたり、イントロソロを弾いたりはあんまりしないでしょう。
左) そう!そこなんです。極限まで絞り込んで楽器を作るとしたら、コードが弾けたらいい、というところにサウンド面のポイントがあります。どんぶらこで発見したんですが、2弦あったらコードがちゃんと鳴るんです。
編) へー!っと言いたいところですが、コードつまり和音は最低3音から鳴るんじゃなかったでしたっけ?2弦だと足りないですね。
左) 実際にサウンドを聞いてみてください。コードは2弦でもばっちりです。
編) な、なってますね!どうしてコードが鳴るんですか?
左) ひとつは、コードだけで鳴らしているというより、コード進行で弾いているので足りない音は勝手に脳内で補完されるんです。これを「残音な天使のテーゼ」つまり「音類補完計画」と呼んでます(笑)
編) エヴァですね。そういえば、サイレント三線S3は完全に楽器界の「ロンギヌスの槍」ですね(笑)
左) 冗談はさておき、もうひとつとっても大きな要素があります。それは、この楽器は弾き語りのために設計しているので、2弦で足りない音は・・・。
編) なるほど、うたい手さんのあなたに補ってもらう、という思想ですか?
左) まさしく!逆の言い方をすれば、あなたの歌、歌いたいうたに「最低限のサポート」をささやかに提供してくれるのが「ポケットロック」という楽器なんです。これまでエレキ楽器もいくつか作りましたが、やっぱりアナログでアコースティックな楽器に回帰してしまいました。かつ、それは「うたうたい」のための楽器にしたい!ということで、PocketRockという形にまとまってきたんです。
編) ちなみに、ウクレレとサイズも音色も似ていそうですが、違いはあるんですか?
左) ウクレレは弦の並びが特徴的で、第一弦に高い音がくるようになっています。ポロンという独特の軽やかな音は、最初の弦に当たるとき、その弦がキーが高いので「軽やか」に聞こえるんです。それに対して、PocketRockは2弦しかないので、最初に低い音がくればそのイメージで進行しますし、高い音がくれば軽やかにもなります。
編) 弾き方によっても意外にバリエーションがある、ということですね。
左) ですね。まだ世間に登場したばかりの楽器なので、みなさんで自由自在に開発してほしいくらいです。ぜひ、一度手にとってみてください!
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というわけで、史上まれにみる妄想記事でお送りしたインタビュー風「PocketRock」の魅力、いかがだったでしょうか。
ちゃんと考えて作ってるんだぜ!ということをさりげなく主張するためだけの記事でもありましたが、しっかり考えて作っております!
現在、エコモデルのみ在庫ありで、その他は受注生産になっていますが、ご希望の方はメールください。