2007年10月15日月曜日

【三線ism】 合理的シリーズ 三味線大解剖編



 さてみなさんこんにちは

 前回は「伝統って合理的」な話を書きましたが、今回はまたまたハードウエアに戻ってみます。

 いつも三味線や三線のような楽器を作っていて思うことなのですが、つくづく「よーできてるなあ」と思うわけです。いろんな楽器があって、それぞれ好き放題の形をしているようですが、三味線や三線はそれはもう「三味線・三線としてよくできている」「まさに合理的な形になっている」のです。

 三味線作っている人もきっと、「昔からこうなってるんだからこうなんだろう」と思っていることでも、一からこの楽器を創造してみると、その理由が「なあるほど」とわかる。今日はそんなお話です。


① 天神はなぜあんなに反り返っているか。

 ギターのヘッドなんかはまっすぐですが、三味線や三線のヘッドはそっくり返っています。これにはいろんな意味があります。まず、そっくりかえることで、弦が棹の表面に対して鋭角で糸蔵へと入っていきますから、弦のテンション(張力)を稼ぐことができます。ギターなんかは張力がないので、わざわ張力を上げるために金具で押さえつけるモデルもあるぐらいですから、まったくもって合理的(笑)

 また、天神のそっくり返った頂点は、実は本体を寝かせたときに、胴の一番下と綺麗にならぶようになってます。(沖縄三線の型の中には、そうなっていない型もあります)そして、なんということでしょう!天神のほんとうの先のカットは、一見棹に対して斜めに落としてあるように見えますが、実は棹の木材に対しては垂直に落とされているのです!!!
 つまり、三線も三味線も天神のさきっちょと、胴の一番後ろ(立てれば下になるところ)は、完全に平行になっている。これはもう合理性の美ともいうべき美しさですね。


② 乳袋はなんのためにあるのか。

 これは誰もそんなことに言及してないのですが、乳袋のない、端から端までまっすぐな棹で三味線を作っている私にはわかるのです。(前に写真を載せていた簡易版板張り三味線を見てくださいね)

 乳袋とは、実は糸巻き(からくい)に左手があたらないためのストッパーなのです。三線では左手はほとんど固定して弾くので、からくいに手がぶつかることはあまりありませんが、三味線では、左手をハイポジからローポジまで激しく動かすので、勢いで一番下の糸巻きに当たるのです。
 でも、乳袋があると、糸巻きに触れずに停止できます。
 三味線の糸巻きは、ご存知のようにすぐにチューニングが狂います。そこになるべく触れないように、ギターやウクレレにはない乳袋がついているのです。なんということでしょう!!!


③ 三線の糸蔵は小さいが、三味線の糸蔵はでかい。

 ぱっと見ると同じような形に見える糸蔵ですが、三線と三味線は根本的に違いがあります。構造的・原理的にはおなじなのですが、糸巻きの刺さっている角度が違うのです!!

 三味線は平行に糸巻きが刺さっていますが、三線は角度がついて刺さっています。この角度が絶妙で、ちょうど人間の手が入るサイズになるように角度がついているのです。三味線は糸蔵がでかいので、角度をつけなくても手が入ります。

 この三線の絶妙具合は、ためしに三線の糸蔵をひとつ作ってみればわかります。何にも知らない人は、きちんと直角に3つの穴をあけようとするので、まず90%以上の確率で、「あれ、これ手が入らない。チューニングできない」という三線ができあがります(笑)
 実は私が三線タイプの楽器を作るときに、一番気をつかうのがここです。ここぞ!という角度でドリルを突き立てるのがミソなのです。


④ あの根緒を考えた人は、天才(笑)

 三味線も三線も根緒というパーツがあります。あの組みひもでできた根緒は、実はひもをくるくると編んでいるだけで、縛り付けたり接着したりいっさいしていません。弦の張力と自分の編まれ方だけで、狂わずどんどん締まっていくあの根緒のすごさたるや、誰も気付かないけどもはやダヴィンチの域です。
 もちろん、あの弦の結び方も天才的ですよね。縛ったり堅むすびしないのに、ほどけず、すぐに外せるなんて、驚愕です。

 

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