2024年1月22日月曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む20 謎はベトナムにあり?! 三線との接点は?

 

 毎度おなじみゴッタンの謎に挑む連載の続きです。


 これまで


 ■ ゴッタンは「ベトナム語 ゴー(板・木材)+ダン(弾)」ではないか?


ということで謎を解く鍵はベトナムにあるのではないか?と考えていましたが、少しそれを裏付けるような話が出てきました。


 飯田さんという方がまとめている内容がとてもわかりやすいのですが、


http://www.yo.rim.or.jp/~kosyuuan/kosyuan/iida/iida18.htm


「琉球音楽史略 山内盛彬」のまとめとして


■ 日本形と琉球の御座楽の三絃は共に中国(支那)系統

■ 琉球の民間形三絃は公式輸入より古く、安南シャム辺りの輸人

■ 蛇皮は福州を経て来るが安南産である

■ 黒檀の用材も安南と同じく棹が短いのは輸入後の改良

■ 三絃は中国では合奏楽器であるが南方と琉球では独奏にも使う。


という点を挙げておられます。


 この安南というのがベトナム北部から中部を示すエリアで、唐の時代の「安南都護府」に由来すると言うのです。


 やはり蛇皮や黒檀を使うあたりが、沖縄三線と中国三弦の源流としてベトナム方面を想定するのは自然な流れのようです。


 山内さんは「棹が短くなったのは輸入後の改良」と考えておられますが、当方でもまったく合意します。


 もう一つ興味深いのは、1720年に琉球へ行った中国人(冊封副子徐葆光)が


「三絃柄北中国短三寸余」(中山伝信録)


と書き残していることで、これをそのまま読めば、中国三弦より沖縄三線の棹は3寸(約9〜10センチ)短い、としていることになります。


この記述について宮城栄昌さんは「琉球使者の江戸上り」において、中国三弦を「三尺位」系統と想定して、それより3寸短いと考えています。


(そうすると2尺7寸程度になるでしょう)


 また田辺尚雄さんによると(「三味線楽起源と伝来」)


「赤犬子が普及に携わった点と、”琉球人は正座する為に腰かけて奏する支郡の三絃の棹を3寸程短くし、自国風に消化した点」


について言及しているようです。いずれにしても三線の棹が短くなったのは、沖縄にやってきたから、ということが興味深いわけですね。


========


 そうすると棹の長さを勘案して、本州の三味線は、沖縄を経由したかもしれないけれど、やってきたのは基本的には「中国三弦」であったと推測してよいと思います。


 短くなった「沖縄三線」が本州へ行ったわけではなく、「3尺くらいの長い蛇皮三弦」が、琉球にも来たし、本州へも行ったと考えるのが自然と思われます。


 つまり、沖縄三線は、「本州三味線の先祖」ではなく、中国三弦という親から同時に分かれた「きょうだい」だということです。



2024年1月14日日曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む19 玩具としての木製三味線 ゴッタンはおもちゃか?

 

 さてみなさんこんにちは。


 ゴッタンの寸法について、悩みながら検証している最中ですが、


 ■ 沖縄三線の写しであれば最短で短い(2尺5寸)であることは頷けるが


 ■ それは沖縄三線が明清楽の影響を受けて短くなっているからで、


 ■ 薩摩の音楽が「指固定の演奏法」と関係ないのであれば、短い必要がない


 ■ なおかつ、渡来品の三弦の本来の長さは3尺であろうということから考慮すると


 ■ 短くないゴッタンがあってもよい


というあたりをずっと考察しています。


 ベトナム方面や中国南方から来る三弦琴は、おおむね3尺で、短いものはないわけですから、楽器の形態としては3尺のものがゴッタンに取り入れられてもよいわけです。


 ところが、多くの文献では「古いゴッタンはさらに短い」と書き添えてあることが多く、それは平原利秋さん所有の楽器でも、たしかにその傾向がありそうです。


 https://www.nishinippon.co.jp/image/10410/


 ただ、この考え方を挙げた時に「短いゴッタンは女子供のための、おもちゃ的なものである」という意見もあり、それを検証していました。


 すると、面白い話が見つかったのです。


「郷土教育の概覧」 昭和9年

徳島県女子師範学校・徳島県立徳島高等女学校郷土研究部 編


に添付のような記事があり、徳島県で「玩具として木製の三味線を作っていた業者があった」ことがわかります。


 この「木製玩具三味線」は徳島県に限らず、全国的なものだったようで、


「東京玩具商報」東京玩具人形問屋協同組合 昭和27年

にも



 玩具会社の広告として「当店独特の木製・三味線・太鼓各種取り揃えております」とあり、木で作った玩具三味線というジャンルがあったことがわかります。


 さらに面白いのは、

「玩具及人形類公定価格要覧」 東京玩具卸商同業組合 編 昭和15

には、この玩具三味線のサイズがはっきり示されていることでした。


 ここでは琴や三味線の玩具について示されますが、



木や紙などを使って作った「子供用玩具三味線」が

■ 1尺8寸

■ 2尺

■ 2尺3寸

などのサイズであることがわかります。


 (その多くが「布張りの胴当て」や「撥」を付属していることから、本州三味線を模したものともわかります)


 これらのデータからは「たしかに、玩具三味線というジャンルがあったこと」は伺えますね。


 そしてミニチュアではなく、長さが2尺前後ちゃんとあるので「子供が弾けるサイズ」だったこともわかります。


 たしかに、2尺5寸程度のゴッタンが「子供向けのおもちゃではないか?」と思われてしまうのも、おかしくはありません。


 最終的には、これらの楽器の形態が「どういう形状をしていたか」で話はズバッときまります。


 おそらくこれらの玩具三味線は「本州三味線の写し」でしょうから、海老尾やら乳袋やら、鳩胸猿尾やら、三味線の形状を模しているはずです。


 しかし、ゴッタンの本来の姿はそうした形状にはなっていないので、「まったく別の派生である」ということは形態からは述べることができると思います。


(つづく)



2024年1月13日土曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む18 ゴッタンが入ってきた経緯を探る

 

 さてみなさんこんにちは。


 前回は長年に渡る謎が「スッキリ」解決したような、ものすごい大どんでん返しでしたね。


 ゴッタンの語源は、おそらく「木弾」で「ゴー・タン」というベトナム語に関係がありそうだ、というオチでした。


 しかし、そうなると、再検討しなくてはいけないことが出てきます。それはいわゆる三弦の仲間ではあるものの、蛇皮三弦とは違う流入の仕方をしたのではないか、という点です。


 これまで、沖縄三線の変形だと考えていましたが、それも一度リセットしてよいかもしれません。


 沖縄に蛇皮の三弦が入ってきて、薩摩地方のどこかには「木弾」が入ってきた、とすれば別物の可能性もあるからです。


 同時に、南方の周辺国家についても検討してみました。東南アジアには現在


■ フィリピン

■ インドネシア

■ ベトナム

■ ラオス

■ カンボジア

■ タイ

■ ミャンマー

■ マレーシア


などがありますが、「ゴータン」がやってきたと思われるのはベトナムです。ベトナム以外には「ダン」系の楽器がほとんどなく、名称の関連性も薄いからです。


「ゴー・ダン」がやってきたとすればベトナムであろう、というのが第一選択なのですが、それでも気になる点があります。


 それは現在の言い方だと、ベトナムでは「ダン・ゴー」であること。むしろ「ゴー・ダン」であれば中国式になります。


 そしてその中国では「ダン(弾)」系の名称があまりなく「チン(琴)」系の名称のほうが強いことです。


 ということは、ゴーダンは、中国風でもあり、しかし言葉はベトナム語ということになります。ベトナムから直接やってきたというよりは、海運や通商などの間に、「越南と中国のはざま」を行き来しながら船に乗ってきたものと思われます。


 おもしろいことにベトナム楽器には2つの言い方があり、たとえば


■ ダン・グエット と グエット・カム  (弾月 と 月琴)

■ ダン・バウ と ドク・フイェ  ン・カム (弾瓢 と 独弦琴)


などですが、前者がベトナム風、後者が中国風と考えれば、とても納得がゆきます。 


 おそらく中国風とベトナム風のはざまで揺れ動きながら、これらの楽器が伝播したものと思われますね。


東アジアの国際関係とその近代化 朝鮮と越南  原田環

 https://www.jkcf.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/11/02-0j_j.pdf


の論文によると、清国を中心とする朝貢関係で言えば


「朝鮮・越南・琉球」の3つの国


が特別な地位を持ったことが示されています。もちろん、琉球は薩摩藩にも朝貢したわけですが。


 だとすれば薩摩に「木弾」が入った理由も頷けます。中国風になった越南の品が入る可能性が、最も高いからですね。

 (加えて、経由地としてやっぱり琉球が上がってきそうな気がします)


 これも参考として琉球における楽器の様子を見ると


http://kumiodori.jp/kumiorori/index.html


首里城での慶賀(ケイガ)や御冠船踊(カンセンオドリ)、または江戸上り(エドノボリ)の際に奏(ソウ)された室内楽(シツナイガク)を「御座楽(ザガク)」というが、それは中国の明・清楽系統(ミン・シンガクケイトウ)の音楽を奏するものであった。そのときの楽器には、弦楽器(ゲンガッキ)に瑟(ヒツ)、二線(ニセン)、三線(サンセン)、四線(シセン)、琉三絃(リュウサンゲン)、長線(チョウセン)、琵琶(ビワ)、胡琴(コキン)、揚琴(ヨウキン)、月琴(ゲッキン)、提琴(テイキオン)などがあり、打楽器に二金(ニキン)、三金(サンキン)、銅鑼(ドウラ)、三板(サンパ)、小鉦(ショウショウ)、金鑼(キンラ)、小銅鍵(ショウドウラ)、新心(シンシン)、両班(リョウハン)、韻鑼(インラ)、挿板(ソウハン)、ハウ子(ハウツ)、檀板(ダンバン)、相思板(ソウシハン)、着板(チャクバン)などがあり、吹奏楽器(スイソウガッキ)に篳篥(ヒチリキ)、半笙(ハンショウ)、哨吶(ソナ)、立笙(リッショウ)、横笛(ヨコブエ)、管(カン)、銅角(ドウガク)、喇叭(ラッパ)、洞簫(ドウショウ)、十二律(ジュニリツ)などがあった。また、琉球王国時代に中国から伝来した道中楽(ドウチュウガク)を「路次楽(ロジガク)」と称するが、それに使用する楽器には銅鑼(ドラ)、両班(リャンハン)、哨吶(ソナ)、喇叭(ラッパ)、銅角(ドウカク)、鼓(クウ)、新心(シンシン)などがあった。”


とあり、「二弦・三弦・四弦系楽器」や「琵琶・琴系楽器」は見られるものの「弾系楽器」は見られず、ベトナムから直接は琉球王国へ伝播はしていないと推測できます。


 とすれば、「弾」の流入は、公式なものではなく、漂着者などが持っていた等、イレギュラーなものであったかもしれません。


(御座楽では沖縄三線よりも大三弦・中三弦の使用が目立つ。


https://rujiuza.com/instruments/uzagaku/


もとの記事中に「琉三絃」とあるのが、いわゆる短くなったあとの沖縄三線かもしれない)





https://poste-vn.com/lifetips/vietnam-instrument-350


↑こちらのサイトでは、木製三弦である「ダン・ダイ」の音色が聞けます。棹が長いのはハイポジション中心に弾くからでしょう。


 また、いわゆる三弦である「ダン・タム」について棹が短いことが書かれています。動画で見る限りでは沖縄三線よりは長そうですが、現代ゴッタンくらいの長さなのかもしれません。


https://item.rakuten.co.jp/earthvillage/130019/


 現行品は全長90センチらしいので、まさに現代ゴッタンとおなじ。


 こうして考えると、ゴッタンはやはり「三味線よりは小さい」ということは確実でOKと思います。

 ただし古ゴッタンが2尺5寸などの「もっと短い」棹だった話は、オリジナルの「木弾」がどうであったかも考慮する必要があると感じます。

 沖縄三線との影響関係を探ってゆく必要があるでしょう。


https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13110715153?__ysp=5rKW57iE5LiJ57eaIOOBquOBnOefreOBhA%3D%3D


によると古い沖縄三線の胴は、現在の80%くらい小さい、との話もあり、さらに謎が深まります。


 現在の三線胴は180ミリ程度ですから、それに80%を掛けると144ミリということになり、以前に紹介した平原さん所有の「現代ゴッタン」と「古ゴッタン」のサイズ比率とおなじくらい小さいことになります。


=======


 さらに、この記事を書いている途中で発見したのですが、(すでにアップ済み)、沖縄三線の棹が短いのは明清楽との関係が確実にありそうです。


 ■ ベトナム三弦はカポをつけて弾く

 ■ 明清楽三弦もカポをつけて弾く なおかつ指固定で弾く。

 ■ 中国三弦のオリジナルはカポをつけない。


 という関係性があり、沖縄三弦はおそらく時代的には三弦が入ってきて、工工四が整備される頃かそれ以降に、「短く製作された」可能性が高いと思われます。


 そうすると、考え方としては、


■ 古い時代のゴッタンがさらに短い、というのは沖縄三線の影響か(2尺5寸)

■ 三弦琴、三弦子の基本形からすれば90センチ寸法は”正しい”(3尺)


という2つの観点があることになります。


 このあたりを追求してゆけば、ゴッタンがやってきた時代や形状の考え方も整理されてくるかもしれません。


 音楽的には、少なくとも琉球宮廷音楽と薩摩民謡は直接的につながるわけではないので、


■ ゴッタンは指固定ではないだろう(推測)

■ ゴッタンと明清楽の関係は薄いだろう


と仮に考えれば、別に「短くする」必要はないことになります。


 そうすると、ゴッタンには「2尺5寸の三線を模したもの」と「3尺の三弦系のもの」の2パターンが混在していても、不思議ではないということになるでしょう。


 むしろ、指固定ではない演奏法からすれば、短い必要がなく、「ふつうの三弦系同様、3尺に近い」大きさであっても良いことになります。


 このことを確定してゆくには、やはり「ゴッタンの音楽性」に立ち戻る必要があるかもしれません。


(つづく)









2024年1月12日金曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む17 捨てる悪魔あれば、拾う天使あり!ゴッタンの語源に迫る!

 

 さてみなさんこんにちは。


 ゴッタンの語源に再び迫る新シリーズ! 前回登場したのは「ごふたん」という謎の言葉でした。


 南方系の言葉で「ゴータン」だと推定される名詞が、ゴッタンにとてつもなく関係する?という恐ろしい話でしたが、ひらめいてしまったかもしれません!!!


 まさに、悪魔の証明からの復活大逆転劇でございます!


 三弦を始めとする中国系楽器は、中国各地から関連地方に広がり、当然ながら日本にまでやってきています。そこで雲南省や貴州省などの少数民族の楽器までしらみつぶしに探したのですが、鳥集忠男さんの言うところの「グータン」は見つからなかったのでした。


 基本的に、中国の楽器で三弦のものはすべて「三弦」です。(秦琴や、月琴、阮咸などはもちろんありますが、三弦派生の楽器はほとんど三弦に近い名称がついています。


 したがって「グータン」が存在するとしても、なぜ「三弦」から離れているのか、よくわからない、という点が問題でした。


 ところが東郷町の方言辞書では「ゴータンサンセン」なる語を挙げています。これは、あくまでも三弦の一種でありながら、それを形容するなら「ゴータン」であることをイメージさせます。


 ちなみに余談ながら、中国の「三弦」は「サァン シィェン」に近い発音だそうで、その意味では「さんしん」はいいところをついている感じがしますね。



https://ja.bab.la/%E7%99%BA%E9%9F%B3/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%AA%9E/%E4%B8%89%E5%BC%A6%E7%90%B4 


↑で現地の発音が聞けますが「サンシンチン」と言っているように聞こえます。(三弦琴)


 さて、本題です。


 私は中国の秦琴も持っているのですが、秦琴、三弦、月琴、阮咸などはそっくりそのままベトナム楽器になって、あるいは2弦に減って伝播していることが知られています。


https://saisaibatake.ame-zaiku.com/gakki/gakki_zukan_vietnam.html


ベトナムの楽器は、↑など多数のサイトで見ることができますが、


ダン・グエット ダン・セン ダン・タム


など、「ダン」がつく楽器が多いことが特徴です。


ちなみに


■ ダン・グエット グエットは月を表すので、月琴

■ ダン・セン センは蓮の花 オリジナルは中国秦琴(梅花秦琴)なので、花の形

■ ダン・タム タムは「三」つまり三線

■ ダン・ダイ ダイは「長い」つまりロングネックの弦楽器

■ ダン・バウ バウは瓢箪(ひょうたん) ひょうたん型の一弦琴


という感じです。


 すでに勘の良い方は気づいたかもしれませんが、ベトナム語と言いながら、中国文化の影響を多大に受けていますから、実は中国語であり、漢字です。


 日本語でもかなり意味が通じます。


■ 弾月 だんぐえっと だんげつ(日本語風読み)

■ 弾蓮 だんせん 

■ 弾三 だんたむ だんさん

■ 弾長

■ 弾匏 (匏はウリなどの仲間)


■ 弾箏 ダン・チェイン というのもあります。日本語風だと だんきん


 さて、これだけ「ダン」が続くと、「ダンが弾である」ことは納得できますし、なんとなく


「ゴッタンのタン」


が関係あるのではないか?と思ってしまいますよね。


 鳥集説でも「古弾(グータン)」でしたから、タンは弾である可能性が高くなってきました。


 では。「ごふたん」とはなにか。


 たんが「弾」だと仮定すれば、ベトナム語における「ゴー」が何かを調べたらよいことになります。


 で、調べたら恐ろしい結果が出たのです!!!


 なんと、ベトナム語で「ゴー」は


https://vjjv.weblio.jp/content/%E3%82%B4%E3%83%BC


「木、木材」


なのです!!!!


 おっそろしいほど、そのものズバリの回答ではないですか。


 こんなにスキッとつながることがあるでしょうか!!



 つまり、ベトナム風に名前をつけるならば「弾木」(ダン・ゴー)であり、中国風に入れ替えれば


「木琴 (木弾・ゴーダン)」


でもあることでしょう。(けして ”もっきん” ではない)


 これで、鳥集説が発せられるかなり前に、東郷町の方言辞書が「語源は南方系」と書いた意味がわかるというものです。


 ベトナムだけに限るものではありませんが(なぜなら、越南語も中国語の影響下にあるから)南方系中国方言としてゴー・ダン(ごふたん)があり、それが音便化して「ゴッタン」と変化していったと考えれば、自然です。


 当時のベトナムなどに固有名詞としての「ゴー・ダン」が存在していたかはわかりません。しかし、「ゴーな、ダン」(木の弦楽器)という言葉はあったと思います。


 基本は中国語なので、特段不思議なことばではないからです。


(苗族に「古瓢琴」があったり、「弾琴」があったりしたことは、この中国系「琴」の使い方と、ベトナム系「弾」の使い方の接点としておおいに納得できます)


  ちなみにベトナム語では「cay 」という語も木を表すのですが、cayがどちらかというと生木や植物としての木を表すのに対して、go は木材や材木に近いようです。


 そのことも「板三線」の意味に近いと思います。


 というわけで、左大文字的結論は、


「ゴッタンは 木弾(ゴーダン) であった!」


ということになりそうです。


 しかし、ゴクタンなどの語も多数見られるので、ゴーダンの意味がわからない中で「ゴク」系の硬い印象の言葉と融合した可能性もあると思います。


 その意味では、「ごったましい」系の語源も、あながち否定するには早いと思います。


 (つづく)










2024年1月11日木曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む16 ことばの悪魔は復活するのか?ゴッタン新・新説の登場!

 

 さてみなさんこんにちは。


 ゴッタンの語源については、左大文字なりに「解決した」はずでしたが、なんということでしょう。悪魔の証明のように「古弾の存在がない、ことは証明しようがない」ということでしたが、


 なななんと、その悪魔が復活したのでございます!!!


 まさに謎が謎を呼ぶ展開ですが、真実はいつもひとつ!じっちゃんの名にかけて!が合言葉ですから、どんどん深みにハマってゆきましょう。


 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/306305/


 鳥集忠男さんが「ゴッタンは古弾である」説を唱えたのは、1987年のことだと西日本新聞は書いています。

 ついでにウィキペディアでは

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%83%E3%82%BF%E3%83%B3

「花和尚訪中記」での記述についても触れています。この文章が発表されたのが1987年なので、「古弾(グータン)」説はここから始まったと言ってよいでしょう。

(季刊南九州文化第31−33号に収録)


 ところが、いつものように古い文献を調べていると、とんでもない記述が見つかりました。


 それは、「東郷町郷土史」という鹿児島県東郷町で1969年に刊行された資料にかかれているのです。

(いまの薩摩川内市)


 まずは、その生写真をみてみましょう。



■ ごふたん 板三味線 ごふたんさんせん 語源は南方系



 いままでの発音では「ごくたん」「ごきたん」「こつた」などが登場しました。ゴッタンは、促音便形でしたが、「ごふたん」は、ウ音便に近い発音です。


 旧かなづかいなので、発音を現代に直せば「ゴータン」ということになるでしょう。


 恐ろしいのは、添え書きに「語源は南方系」とあることです。


 南方が即、雲南省を示すわけでもないし、「ゴータン」が「グータンという同形状の楽器」を示すとは限りませんが


 何かある、そこになんかある?


のは、じわじわと伝わってくるのではないでしょうか。


 興味深いのは「ごふたんさんせん」とも書かれていることです。これだと、何度も検討してきた中国の少数民族の楽器が「三弦」であることと矛盾はしません。


 サンセン系の楽器があり、その中で「ゴータン」な「サンセン」がある、というニュアンスで理解することができます。


 ただし、これだけでは


■ 分類上「ゴータン」な「サンセン」が存在する

のか

■ 「ゴータン」という形容詞がつけられるような「サンセン」が存在する

のか

それ以外なのか、よくわからないことです。


 しかし、鳥集説に遡ること18年前に「ごふたんは南方系のことば」と書いている辞書があることは注目に値します。


(もちろんそれが楽器を示すかどうかも、現段階ではわからないのですが、なにせ、ある三弦がゴータンなことは伝わります。なにがどうゴータンなのかはわかりませんが)


========


 さて、不思議なことに東郷町の方言辞書では、「ごくろし」系のコトバや「ごく」系の単語は収録されていませんでした。

 また「たん」「たんこ」系の言葉もありません。

 一点気になるのは


■ くいたん 背板・製材の際に出る用材にならぬ部分


という語があったことです。ネットでは


https://kagoshimaben-kentei.com/jaddo/%E3%81%8F%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%93/


「刳(く)り端(たん)」の転訛か?


とあり、端の意味が強めですが、「たんこ」系の言葉と関係があるのか、気になるところですね。


 さて、何はともあれ、「南のほうに、ゴータン」があるらしいことがわかりました。


まるで西の方である天竺を目指す西遊記のようになってきましたが、南の方に一体何があるのか!ゴータンとは何なのか?


 謎はまだまだ続くようです。


(つづく)









2024年1月10日水曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む16 古ゴッタン写真一覧

 

 現代ゴッタンではない「古いゴッタン」の資料写真を引用元を明記の上紹介してゆきます。


 年代順 


■ 佐多岬 野田千尋  南日本出版文化協会 1966



(大泊での写真 女性が演奏している。三味線撥を用いていることがわかる)


■ 民謡のふるさと : 明治の唄を訪ねて 服部竜太郎  朝日新聞社 1967


(これはイラストだが、原写真がある<南日本風土記にオリジナル>ので掲載)


(大隅大泊での写真 演奏者はゴッタン・太鼓とも女性)
(おなじ写真は、「民謡紀行全集 第3」服部竜太郎 1962・「日本の民謡」服部竜太郎 角川新書 1964 にも登場)


■ 霧島山麓(姶良郡北東部)民俗資料調査報告書 鹿児島県明治百年記念館建設調査室 1972


(牧園町の板三味線 全長85.5センチ 胴長18センチという。現代ゴッタンが全長92センチ程度であることを考えると、かなり小さいが、沖縄三線より大きいことがわかる。所有者はやはり女性)



■ 西日本民俗博物誌 下 谷口治達  西日本新聞社 1978


(見えづらいが、このゴッタンの天の部分は、直線型で中国三弦のような形状にも見える)



■ 生きている民俗探訪鹿児島 下野敏見 第一法規出版 1979.1


(荒武タミさんを取材したもの。糸巻きが短い)


■ 南日本風土記 第三版 川越政則 鹿児島民芸館 1983.3


(1つめの写真とおなじゴッタンかどうか不明)


■ 大乗 : ブディストマガジン 42(1)[(488)] 大乗刊行会 1991-01



(ゴッタンを弾く鳥集忠男氏 楽器は荒武さんから譲られたものだろう)


■ Latina = ラティーナ : 世界の音楽情報誌 (468) 1993-02



(1992年 アジア民族芸能祭でゴッタンを弾く鳥集氏 楽器は新しいものか)




2024年1月9日火曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む15 ゴッタン製作者一覧(判明分)

 

 ゴッタン製作者として判明している分、あるいはゴッタン製造業者として判明しているものを仮に一覧としてまとめておきます。


(最終更新 令和6年1月)五十音順 敬称略



<薩摩・大隅・日向>

■ 上牧正輝 (宮崎県三股町) 美木工房 黒木俊美氏の弟子

■ 黒木俊美 (宮崎県都城市山之口町) 宮崎県伝統工芸士 

■ 新馬込(しんまごめ)速 (鹿児島県鹿屋市串良町) 南日本新聞S53.1.1掲載

■ 千年工芸 (鹿児島市鴻池町) 屋久杉を扱う店だったが、昭和期にかなり多くのゴッタンを製造している。

■ 平原利秋 (鹿児島県曽於市財部) 大工からのゴッタン製作者

■ 宮原良信 (宮崎県えびの市中上江) 木工所勤務からのゴッタン製作 「えびのゴッタン」の製作者



<他地域・レプリカ>

■ 小坂弦楽器工房 (京都府船井郡京丹波町) 現代ゴッタンの作例 弦楽器製作者

■ 左大文字堯司 (兵庫県丹波篠山市) 木製三味線製作者・講師等 ゴッタン作例