さてみなさんこんにちは。
去年から今年にかけて「ゴッタン」制作を続けていて、特に今は「古ごったんの復元」と「ゴッタンGTRの開発」を並行してやっています。
先にゴッタンGTRができてしまったので、それは先日公開しました。
このゴッタンGTR、新時代のゴッタン演奏フィーリングを実現させたものすごいやつ!と言いたいのですが、設計と製造はともかく、実際に弾いてみると、どこか寂しいのです。
ようするに、作ったけれど音に満足が行ってないんですね。左大文字さんとしては、これまで数百以上の木製三味線を作ってきているので、だいたい組み上げて音を鳴らせば「アタリかハズレか」くらいはわかるようになってきています。
で、もちろん演奏したのですが、「イマイチ」なのです。
なんでだろー、なんでだろー、なんでだなんでだろ♪
実はこのゴッタンGTR、歴代木製三味線の中では、最新モデルで、設計もブラッシュアップしているのですが、かなーり前に元ネタになったものがありました。
それが
https://sanshinism34.blogspot.com/2009/09/ism3.html
https://sanshinism34.blogspot.com/2009/07/ism_13.html
https://sanshinism34.blogspot.com/2009/07/ism_16.html
の作品、当時「ごみせん」と名付けたグループです。
廃材であるゴミからつくったので「ごみせん」なのですが、まあ「ごくせん」に似せたロゴをつけて遊んでいた試作品でした。
これが2009年7月製造で、15年経過しています。
このごみせん1号機と並べながら「ゴッタンGTR」を作っていたのですが、
ぜんぜん音が違う!旧ごみせんのほうが音がでっかい、響きがよい
ということに気づいて愕然としています。もちろん、旧ごみせんはサウンドホールがついていて、その分深みのある音が出るのは当然なのですが、そもそもの楽器が放つ音量とか、響きとかがぜんぜん違うのです。
材料的にも、おなじ建築系廃材を使っているし、なんなら今回のほうが、基本的に「鳴りがよいだろうと想定される材料」を選んで作っているのですが、それでも旧版のほうが音が良いのです。
「はっ、これがあの古いバイオリンのほうが良い音がする、というやつか!」
と気づいてしまったわけで。
音が違う原因はわかっています。
おそらくは木の水分量、乾燥度合というか、良い意味での熟成、枯れ具合だと思います。
通常の三線や三味線は、棹の密度が高く重いほうがいいのです。そして、皮の張りで音の良し悪しを調整できるので、古材になるほど音が良い、ということは「明らかにはわからない」のだと思います。
ところがゴッタンの場合は、音響板である皮部分も、胴も棹も木製なので、如実に材の状態が表に出てしまう、音になって出てきてしまうのだと思います。
昭和年間に作成された古いゴッタンも持っているのですが、(当然杉オンリーでできている。)これはサイズの大きさに比較して
めっちゃ軽い
のが特徴です。ええ、軽いの。大きいのに軽いのです。
これはたぶん軽い楽器なのではなく、「水分が抜けて軽くなっている」のだと思われます。
★一説には、木材中の樹脂成分などが、バクテリアによって壊れて、純粋なセルロース繊維分だけが残っていくので、木が熟成されるのだとか。ほんまかいな。
通常の三線や三味線は、基本的には「重いほうがよい楽器(密度が高い)」とされているので、ゴッタンは真逆です。
どちらかというとバイオリンに近い評価
ということになるかもしれません。
(バイオリン界隈では、軽い楽器のほうがよいとされることがあります)
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そうなるとゴッタン業界では、新作よりも「古作」「中古」「眠っていたもの」に付加価値があるような話になってきます。
新作を作れば賄える、というのではなく、ある程度(10年スパン)の長い時間を見越しながら、楽器を供給してゆく必要がある、となれば、これは大変なことであり、なおかつ面白いことかもしれません。
うちにも古い作品が残っているので、検証してみる必要がありますね。