2023年12月28日木曜日

【連載】 謎の楽器「ごったん」ミステリーに挑む03 「ごきたん・ごくたん」とは何なのだ!

  さてみなさんこんにちは


 前回は「ゴッタン」の語源は、一般的に言われているように「古弾(グータン)」とは違うのではないか?という点に着目しましたが、今回はその続きです。


 その一つのヒントとして明治39年の「鹿児島方言集」に掲載されていた「ごったん・ごきたん・ごくたん」の表記に注目しました。


 音便化して「ごきたん や ごくたん」が「ごったん」となったであろうことは、一応は納得できます。しかし、その先がいけない・・・。ごくたん や ごきたんという言葉が判明しても、まだ何も解決はしていないからです。


 補足ながら「ごくたん」の用例は他にも見られます。


 これも引用しますが昭和17年の 新納元夫 著 「血は麗らかに躍る : 日本精神の精華」においても


『ゴクタンとは板三味線のことである』


と佐土原地方における宴会の描写が出てきます。


 残念ながらドキュメンタリーではなく、小説のようなので、ややデータとしては信頼度が落ちますが、新納元夫(大海)氏は鹿児島の人で、幕末から明治にかけての小説を書いている人のようですから、ゴクタンを「誤って」表記した可能性はあまりないと考えます。



 ちなみに佐土原は宮崎県の地域名です。


==========


 さて、「ごき、ごく」のほうはいったん脇へ置いておいて、もうひとつ気がかりなのは、既出の「鹿児島方言集(1906 久永金光堂)」から「たん」の部分です。



 この辞書において「たん」がつく言葉を見てゆくと、小さな発見があります。

 それは、「たんこ=桶屋」で「たんご=擔(担の旧字)桶」となっている点です。


 鹿児島では「たん」は桶のことを意味するようなのですが、


 鹿児島弁ネット辞典

https://kagoshimaben-kentei.com/jaddo/%E3%81%9F%E3%82%93%E3%81%94%E3%83%BB%E3%81%9F%E3%82%93%E3%81%93/


「担桶(たご)」が変化して「たん・たんこ」となったようなのです。


肥担桶・水担桶の例

https://seiabox.exblog.jp/11837689/


https://butaco-try.xyz/koedame-1489#google_vignette


 上記の例のように、天秤棒と担桶がセットになると、たしかにリュート系の楽器に似ているといえば似ています。


 そこで、


『ごったん、とは担桶(たん)に見立てたものである』


という仮説を、ここで提示してみることができるのではないでしょうか?


==========


 さて、ごったんの語源については、いったんここで足踏みです。仮説としては「ごき・ごく」という何か?と「タンコ(担桶)」が合体したものかもしれない、と提示はしたものの、ごきやごくの正体が、まだわからないからです。


 それでも、ごったんの謎解きは先へ進めましょう。


 音源としての「ゴッタン演奏」は、実は荒武タミさんのものしか残っていません。かなり私も探しましたが、鹿児島の民謡を三味線で演奏したものはともかく、ゴッタン・ごったんでの演奏となると、ほとんど公的には残っていないからです。


(荒武・鳥集ラインにおける私的な録音は残っているそうです)


 しかし、音源はなくとも、「文献資料」におけるゴッタンの演奏の様子は、追いかけることができます。


 次回は、ゴッタンの演奏の実際について、文献からの追跡調査を行ってゆきましょう。


(つづく)



 

0 件のコメント:

コメントを投稿