さてみなさんこんにちは
前回は「ゴッタン」の語源は、一般的に言われているように「古弾(グータン)」とは違うのではないか?という点に着目しましたが、今回はその続きです。
その一つのヒントとして明治39年の「鹿児島方言集」に掲載されていた「ごったん・ごきたん・ごくたん」の表記に注目しました。
音便化して「ごきたん や ごくたん」が「ごったん」となったであろうことは、一応は納得できます。しかし、その先がいけない・・・。ごくたん や ごきたんという言葉が判明しても、まだ何も解決はしていないからです。
補足ながら「ごくたん」の用例は他にも見られます。
これも引用しますが昭和17年の 新納元夫 著 「血は麗らかに躍る : 日本精神の精華」においても
『ゴクタンとは板三味線のことである』
と佐土原地方における宴会の描写が出てきます。
残念ながらドキュメンタリーではなく、小説のようなので、ややデータとしては信頼度が落ちますが、新納元夫(大海)氏は鹿児島の人で、幕末から明治にかけての小説を書いている人のようですから、ゴクタンを「誤って」表記した可能性はあまりないと考えます。
ちなみに佐土原は宮崎県の地域名です。
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さて、「ごき、ごく」のほうはいったん脇へ置いておいて、もうひとつ気がかりなのは、既出の「鹿児島方言集(1906 久永金光堂)」から「たん」の部分です。
この辞書において「たん」がつく言葉を見てゆくと、小さな発見があります。
それは、「たんこ=桶屋」で「たんご=擔(担の旧字)桶」となっている点です。
鹿児島では「たん」は桶のことを意味するようなのですが、
鹿児島弁ネット辞典
「担桶(たご)」が変化して「たん・たんこ」となったようなのです。
肥担桶・水担桶の例
https://seiabox.exblog.jp/11837689/
https://butaco-try.xyz/koedame-1489#google_vignette
上記の例のように、天秤棒と担桶がセットになると、たしかにリュート系の楽器に似ているといえば似ています。
そこで、
『ごったん、とは担桶(たん)に見立てたものである』
という仮説を、ここで提示してみることができるのではないでしょうか?
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さて、ごったんの語源については、いったんここで足踏みです。仮説としては「ごき・ごく」という何か?と「タンコ(担桶)」が合体したものかもしれない、と提示はしたものの、ごきやごくの正体が、まだわからないからです。
それでも、ごったんの謎解きは先へ進めましょう。
音源としての「ゴッタン演奏」は、実は荒武タミさんのものしか残っていません。かなり私も探しましたが、鹿児島の民謡を三味線で演奏したものはともかく、ゴッタン・ごったんでの演奏となると、ほとんど公的には残っていないからです。
(荒武・鳥集ラインにおける私的な録音は残っているそうです)
しかし、音源はなくとも、「文献資料」におけるゴッタンの演奏の様子は、追いかけることができます。
次回は、ゴッタンの演奏の実際について、文献からの追跡調査を行ってゆきましょう。
(つづく)
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