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2009年1月5日月曜日
【三線ism】 三味線を科学する その3 「三味線胴はマニアック」
さてみなさんこんにちは
今回はこの間からの「三味線の科学」に話を戻します。
三味線の胴は、スピーカのエンクロージャにたとえられる、という話をしてきましたが、いよいよ通常の三味線や三線の胴について研究してみます。
三味線の胴は、表皮を振動させて音を出しますが、そのとき、胴の内部の圧力が皮の振動に合わせていっしょに振動するという話を前回したところです。
ところが、表皮以外の部分が堅くて動かないとすれば、内部で空気圧が高まってしまうので、表皮の振動を邪魔する働きをもってしまう、ということも確認しておきましょう。
そこで、サウンドホールのような穴をあけることで、この内圧(背圧)を逃がすことができるわけですが、通常の三味線や三線はどこにも穴があいていません。
ではどうやって、胴内部の圧力を逃がしているのかがポイントなわけです。
その答えは、おなじくスピーカの種類を考えればわかります。
図に挙げたスピーカは、「ドロンコーン型」もしくは「パッシブラジエータ型」と呼ばれるエンクロージャです。
これは、コストがかかるのであまり製作されない形式のスピーカなのですが、上のスピーカが通常の音を出す振動板の働きを持っています。下のスピーカは、かたちこそスピーカそっくりなのですが、銅線も磁石もついておらず、通電しません。これはスピーカの振動版だけを本物のスピーカの下にくっつけているのです。(スピーカの中ではかなりマニアックな形式です。)
一見役に立たないようなスピーカの偽者なので「ドロンコーン(怠け者のスピーカーコーン)」と呼ばれるわけです。
この偽者スピーカは、上のスピーカの振動によってうまれた背圧によって胴内部の圧力が変化すると、それに応じて一緒に震えます。
本物のスピーカに対して受動的に振動するので「パッシブ」なわけです。
こうして、ドロンコーン型は穴をあけていないのに、サウンドホールと同じように圧力を逃がせるため、低音をちゃんと増強しつつ、かつクリアな音を出せるわけです。
三味線胴も、ドロンコーン型だと考えることができます。ギターに比べてあれだけ小さな胴で、かつサウンドホールなしであれだけ大きな音を出せるのは、ちゃんと音響理論にのっとった構造をしているからです(^^
三味線胴は、表皮で生じた振動とそれにともなう背圧を、裏皮が受動的に受け止めて一緒に振動しているわけですね。
もちろん、スピーカの世界でもそれぞれの形式によって個性や特性が違います。三味線楽器も、「表も裏も皮」だけが正統派なわけではなく、民俗的な伝統や地域の特性などが入り混じりながら発展していますので、いろんな形式があっても面白いとおもいます。
形は似ているけど、実はいろんな働きが違う、ということを知ると、三味線がもっと面白くなりますね。
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