さてみなさんこんにちは。
前回、前々回と実験を続けている「三味線弦の代用品」についてですが、いろいろ張ってみています。
その中で、前回は新作ゴッタン「ポリリズム」に「水糸ナイロン」を張ってみたのですが、いちおう音が出ることは出ます。意外にもちゃんと鳴るので、逆に驚いたくらいです。
ただ、「音の伸びがない」とか「ぽよんぽよんしている」とか、文句を言いだしたらキリがなく、よほど困った時意外には使わないかもしれないな、という感じがしています。
ポイントは
◆ とにかく弦の硬さが必要
ということです。
ナイロンテグスにしても、水糸・撚り糸にしても「ナイロンの繊維に対して、硬度が足りない」のが、楽器弦としての性能が落ちる最大原因だと思います。
三味線弦のトップメーカーである丸三ハシモトさんでも、ホームページを見るとナイロン糸にしてもテトロン糸にしても、
レイトーン
https://www.marusan-hashimoto.com/product/items/?cate=14
”ガンマ線を照射して、硬質化させている”
と、おっそろしいことをさらっと書いていますが、たぶんこれがミソで、ほんとうに硬くないといい音にならないようです。
で、実験として弦に「糊(でんぷん質)」をコーティングさせてみたりもしたのですが、たしかに糊付けすると弦に張りがでます。
ただ、絹糸と違い、ナイロン繊維にデンプンコーティングしても、本質的にはなじまないので、(プラスティックとアミロースだから??)
なんか微妙に違う!
感じになってしまうのです(笑)
★ 絹糸は主成分であるタンパク質「フィブロイン」とその周囲を覆う「セリシン」という2種類のタンパク質から構成されており、セリシンのほうは、水溶性があり、接着性もあるため糊とよく馴染むのだと思われます。
★ ナイロンも、実は吸湿性があるのですが、糊となじむのかは、なんとも・・・(苦笑)
★ 三味線系には「餅米糊」がよく使われますが、もしかしたら糸も「餅」コーティングなのかもしれません。
★ うるち米はアミロースのみで、餅米はアミロペクチンのみなので、そこらへんの違いがあるかも。
★ もしかするとナイロン繊維にも、「もち米糊」をコーティングすれば結果が違う?!
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しかし、そこまで追求してゆくと、せっかく安い弦の代用品を探していたのに、結局
「三味線糸を作るのとおなじ工程を経て、コストがかかってまうやんけ!」
ということになりますね。
というわけで、この段階としての「おすすめ代用弦」をセットアップしてしまいましょう。
それは
◆ ナイロンテグス No10/No7/No5 のセットです。
ちょっと三線よりは細くなりますが、長唄系細棹三味線糸との中間くらいになるでしょうか?
このラインナップだとホームセンターや100均一などでも入手しやすいので、おすすめにしておきます。
No10 0.52ミリ
No7 0.435ミリ
No5 0.37ミリ
が基本で、ここからNo18 0.70ミリ くらいまではズラしてOKだと思います。
ホームセンターでは、No10の次はNo30くらいしか置いていない場合が多いのですが、No30は0.91ミリもあるので、けっこう図太いです。
撚り弦であれば0.9ミリでも違和感がないけれど、ストレート弦の0.9は、ぼよんぼよんでアタック感もなく、ちょっとしんどいと思います。
ストレート弦ばかりになりますが、その分細めで「シュッとした感じでまとめて」ゆけば、まあ心地よく弾けるでしょう(笑)
さて、ナイロンテグスの場合は、硬度がやや足りないので、弦伸びします。
しばらくはチューニングが安定しませんが、そのうちきちんとおさまってくるので、ご安心ください。
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実は市販三味線系楽器での「ナイロン弦・ストレート3本セット」は、採用例がけっこうあって、
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しかし、普通の人は、普通に三味線弦なり、三線弦なりを買ったほうが早いと思います。
イベントなどで「とにかく安価な手作り楽器と弦を大量に用意しないといけない」場面に出くわす左大文字ならではの実験でございました!!
(おしまい)